私小説「酷暑」

第一章:結成


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上っ面をなめるだけ。

社会の表面上だけしか見ようとせず、もろくも
夢と希望を打ち砕かれ、就活に失敗した二人の若者
青島と緑川は、地元零細企業㈱チャントに勤めながら
スターを夢見て、漫才コンビ「ダイハイダーズ」を
結成したのであった。

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(2人)どーもー

(青島)ダイハイダーブルーです。

(緑川)ダイハイダーグリーンです。

(2人)二人あわせて「ダイハイダーズ」です!

(青)初めての方もいらっしゃると思うので
   まずは、自己紹介しますね。

   僕らは、この辺では5~6店ある㈱明治の
   特約販売店のひとつ“株式会社チャント”という
   会社に所属する営業スタッフなんです。


(緑)店の名前は“milkshopDELI”なんて言ってますが
   簡単にいうと牛乳屋です。


(青)アホ!
   「牛乳屋」って言ったら社長に怒られるぞ!
   
   社長は「脱、牛乳屋!」なんて言って
   うちは、配送業じゃなくサービス業だ!って
   こだわって経営してるんだから…

   
(緑)そんなこと言ったって、なにが違う?
   定期的に乳製品をお届けするだけじゃん。
   やってることは他と一緒でしょ?


(青)ドアホ!お前、クビになるぞ!
   なら聞くわ? 僕らダイハイダーは
   なんのために存在してんだ?


(緑)そりゃあ・・・
   子育て主婦スタッフの代わりに
   配達するためだろ?
   ただの代配要員じゃんか。

(青)じぁ、なぜ主婦スタッフは
   「いつでも休んでOK」
   なんて優遇されてんのかわかるか?


(緑)そりゃあれだろ。
   日本政府も「女性の活躍促進」なんて言って
   社会で女性が輝く労働環境を整備しよう!って
   そんな日本の現状を改善するためじゃない?

(青)まぁ、そうだな。

(緑)子育て世代の主婦が働くには「待機児童問題」
   の解決だけじゃ不十分!

   運良く預け先が見つかって、就職しても
   やれ「熱が出た」「具合が悪い」って
   事あるごとにお母さんは呼び出されるからな。

(青)そうそう、子育て主婦が働く!
   つーのは大変なことだよな。


(緑)せっかく見つけた職場でも、その度休んでたら
   同僚たちに嫌味のひとつも言われるちゅーの!


(青)だから、株式会社チャントでは、俺らみたいな
   営業マンを代配要員にした
   “ダイハイダー制度”をつくったんだ!

   企業理念のひとつ「主婦でもちゃんと稼げる」
   これを実現するため、俺らがいるんだぜ。






(緑)子育て主婦スタッフが安心して休めるよう
   いつでも代わりに宅配する…
   これが僕らダイハイダーの使命なんだな~

   でも、これっておかしくないか?
   普通に「牛乳屋」だろ?
   配送業じゃなくてサービス業だ!
   ってこだわりにならんだろ?


(青)はぁ~(´д`|||)
   だから、おまえはポンコツなんだ!

   おまえさ~
   一生懸命宅配してんだろ?


(緑)当り前じゃ!(# ゚Д゚)
   バカにするのもいい加減にしろよ!

   保冷BOXだってピカピカにしてるし
   保冷財だって、お客さんの帰宅時間を
   考えて枚数調整してるし
   名札も付け、ユニフォームだって
   ちゃんと着て宅配してるぞ!
   誤配だって、遅配だってしないよう
   笑顔を絶やさずダッシュで宅配!
   明治宅配スタッフの鏡だろ!!!






(青)はいはい。確かにそうかもな。

   雨の日も、風の強い日も
   炎天下の猛暑日も、吹雪の日も
   文句ひとつ言わずに、笑顔で
   間違いなく確実にお届けする…
   
   そういう点では、俺らは頑張ってるよな。
   評価されていいよな!


(緑)お、おう。
   わかってくれれば、いいんだ・・・


(青)でもな、それは配送業だって同じだろ?

(緑)・・・。
   いや、だからなんでウチは配送業じゃなくて
   サービス業なんだ?って話だろ?


(青)おまえさ・・・
   その頑張りを誰に評価してもらいたい?
   だれに褒められたい?
   だれを喜ばしたい?

   そもそもさ・・・

   何のために仕事してんの?



(緑)うぐぐ・・・(≧血≦;)

   うるさい!うるさい!
   うるさいんじゃーボケーーー

   かっこつけんじゃね~よ!
   お前だって就活失敗したんじゃねーか。
   こんな地味~な仕事で満足してんのか?

   なんのために仕事してんのか?だと

   金だよ!金
   生活するには、金が必要だろ?

 

(青)!!!(#゚Д゚)
   み、みどりかわーーー!!!


 
( ‘д’⊂彡☆))Д´) パーン
 

(緑)な、なにすんだ!

(青)お前は、もはやグリーンじゃない!
   ダイハイダーグリーンじゃない!
   就活に失敗したままの
   負け犬緑川じゃーーーー!!!


(緑)(゚Д゚ )ハァ?

(青)見てみろ!目の前のお客さんたちを。

   誰か笑ってくれてるか?
   誰一人として、今の俺たちを見て
   喜んでないだろ?


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そりゃ、そうだ。
全く漫才の体をなしてないのだから・・・

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(緑)(;゜゜)

(青)な~にが、明治宅配スタッフの鏡だ!
   そんなのは、当たり前のことだ!

   お前は、誰を喜ばしたいんだ?
   ㈱明治か?

   そうか、金だったよな。
   だったら、社長を喜ばせりゃいいんだ!
   社長にゴマすって、お気に入りになって
   せいぜい給料上げてもらえよ!

   でもな、ひとつ言っておくぞ。
   お前、忘れているかもしれないが
   ㈱チャントの設立哲学は・・・

 


   
   
(緑)そうだった…
   社長はいつも言ってたよな
   この会社が、社会をいや、目の前の人を
   喜ばせられないなら、いつでも潰す!って

   人の役にたたない会社なら潰す!って・・・

(青)そうだ!緑川。
   金だけが目的なら、会社にする必要はない。
   「明治牛乳亘理販売所」のままの方が
   よっぽど儲かるハズだ。

   俺たちがいるこの会社は






   ㈱チャントなんだ!
   この企業理念の実現のため
   俺たちはここにいるんだ!

(緑)あ、青島ーーー!!!。゚(゚´Д`゚)゚。

   俺、バカだった…
   そうだよな。㈱明治の手先じゃないもんな。
   明治宅配スタッフの鏡なんて
   やって当然。

   地域住民の元気のための宅配乳製品
   なんだから、安全安心なんて当たり前、
   俺たちの存在意義は、これだもんな!






(青)やっと目が覚めたか!緑川。

   だからこそ、ただ届けるだけじゃ
   ダメなんだ。
   “ちゃんと”毎日摂取してもらうには
   ちゃんとお世話しなければダメだ。

   だから俺たちは、他の明治販売店には
   ないオリジナルのキャンペーンや特典
   イベントを企画し、目の前の人々を

   徹底的に喜ばす♪

   そんなチームにならなきゃいけない。



(緑)漫才も、乳製品の宅配も
   同じサービス業ってわけか!
   
   青島、俺わかってきたぞ。

   
(青)そうだ緑川!
   でもな、宅配サービス業ならではの
   気遣いも忘れちゃいけないんだ。

   俺たちは、お客様の玄関先まで侵入し
   保冷BOXまでお届けする。

   お客様の身になって考えてみろ!
   お前みたいなポンコツがズケズケと
   玄関先まで来られたらどう思う?


(緑)そりゃ、心配だ!

(青)そうだろう。
   事前に気心しれた人だったら問題ないが
   いきなりお前みたいなのが敷地に入って
   きたら、それは「不審者」だ!

   ましては、我々の顧客の大半が主婦だ!


(緑) (´・o・ill)
   そ、そうか!だから主婦スタッフなのか!


(青)そういうことさ( ̄ー+ ̄)ニヤリ

   家族の美容と健康のため、元気のための
   宅配サービス業に最適なのは女性スタッフ。

   正に政府のいう「女性が輝く職場」って訳だ!






(緑)全ての制度・仕組みは、お客様の
   不安・不信・不満の「不」を取り除き
   「お客様を喜ばせる」ため。
   サービス業は、お客様を喜ばしてなんぼ
   だもんな。

   ありがとう青島!



(青)もう忘れんじゃねーぞ!
   頑張ろうな緑川!





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もはや、ブルーでもグリーンでもなく
ダイハイダーズであることすら忘れた
青島と緑川。

いつ漫才は始るのか?その気配すらない。

それでも、この酷く暑苦しい彼らの
果てしない挑戦はつづくのであった。

それは、あの夏の酷暑のように・・・

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8/23ついに公開

第二章:痛感へつづく





《参考》
●㈱チャントならではの“こだわり”はコチラ>>
●就職ガイド“会社設立理念”はコチラ>>
●“ダイハイダーまつり”の様子はコチラ>>

 
 



 


 

私小説「酷暑」第二章:痛感>>

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